原油先物ETFへの長期投資が負けやすい理由

こんにちは。儲けた医です。

コロナショックの構成要因の1つである原油安ですが2020年春、歯止めがかからない状態となっていました。

コロナショック初期からサウジアラビア、ロシアによる増産合戦で供給過多→価格が下落しました。

その後コロナ対策のロックダウンによりガソリン、航空機燃料の需要減少となり、さらに価格が下落する事態となりました。

この時に多く見られた質問があります。それは

原油先物ETF今買っておけば儲かりますか!?

でした。それに対する私の回答は「知らん。儲かるなら私も買います。でも初心者が取引するのはオススメしません。」

なぜなら「仕組みが複雑で難しいから」

原油先物ETFって原油先物とは全くの別物ですからね。今回はそこを解説していきます。

※頑張ってわかりやすく書いたつもりですが、わからないことはコメントかTwitterまでいくらでも質問してください。

1.先物という商品

まず、先物とは何なのでしょうか?先物とは「未来において○○円で買うor売る権利」のことです。

???

原油を例に考えてみましょう。

原油は北海油田や中東の油田から採掘されます。いろいろな燃料や原料の元になるので値段が付きますね。

WTI原油1か月先物が現在18ドルと仮定します。

これは「1か月後に原油を1バレル、18ドルで買う権利or売る権利」が市場にあるという状態なのです。※1バレルは約160L

例えばこの1か月先物の買う権利を1つ購入するとします。すると1か月後の期日に18ドルと引き換えに原油160Lを受け取ることになります。

つまり原油の貯蔵施設が無いと先物は買えない??

 

そういうわけではないのです。次で解説しますね。

※なお、2か月、3か月先物、、、もあります。そういった期限が先(=期先)の先物価格はこちらから見られます。

2.先物の権利を行使する場合

先物を購入して期日が来た場合はどうなるのでしょうか?大きく2通りの決済となります。

現金受渡決済

先物は「物」と「お金」の交換です。

企業等では実際に1バレル18ドルの原油先物を購入し、1か月後に原油を買うということがあります。

これは企業が原料として原油を使用するためです。

こういった取引を「現物受渡決済」と言います。

一般の人でも「金先物」では「地金(延べ棒)」を扱った先物取引をしている人もいます。

銀行に一定量の金塊が保管されていて、期日を迎えるとその権利が得られるというものです。

金ならばそういうことも可能です。しかし、民間人が「原油貯蔵施設」や「小麦貯蔵施設」を持っていることは稀です。

そういう場合、どうするんですか?

次で説明する、差金決済を行います。

なお原油先物にも現物受渡を行っている物もあり、2020年4月末には原油の押し付け合いとなり、一時1バレルー16ドルまで価格が下落しました。異常事態ですね。

原油を受け取りに行ってお金がもらえたんですね!?

差金決済

原油や小麦などの「貯蔵施設が必要になる物」では「差金決済」が行われます。

例えば、1か月後1バレル18ドルで購入した権利(先物)が1か月経って取引の約束日になったとします。

すると取引所が「決済価格」を決定します。

今、例えば原油先物が値上がりして決裁価格が「30ドル」となっていたとします。

するとザックリ言って差額の12ドルが得られるというわけです。

※手数料やその他諸々で多少は前後します。仕組みとして理解してくださいね。

さて、では期日前に先物を処理する方法についてです。

3.先物を期日前に売買する

先物は期日前に反対売買を行うことで期日前に決済することができます。

つまり、1バレル18ドルの権利を購入しているなら1か月以内に転売することができるのです。

1か月先物が20ドルになっていれば売却し2ドルの利益ですし、逆に16ドルになっていれば2ドルの損となるわけです。

ちょっと蛇足

なお、先物には「買う権利」だけでなく「売る権利」もあります。

「1バレル18ドルで売る権利」を購入して1バレル20ドルになったら2ドルの損、逆に16ドルになっていれば2ドルの利益となります。

信用売りみたいな感じですね

そうです。ただ、「買う権利」「売る権利」それぞれに「買い」「売り」で入ることができるのです。

??????

ってなりますよね(笑)

1バレル18ドルの原油を1か月後に「買う権利を買う」「買う権利を売る」「売る権利を買う」「売る権利を売る」ことができるわけです。

あーややこしい。まあ、ここら辺の話はいずれ先物取引について詳しく書くことがあればまとめますね。どちらにせよ初心者向きじゃないので。

4.原油ETFという商品

さて、では本題の原油ETFについてです。

まず、非常に当たり前&大切なことですが「原油ETFは原油先物ではありません」

つまり、原油ETFを買っても先物のように「決済期日」は来ませんし、原油を買わされることもありません。

ただ、ETFというのは投資信託です。ETFについて詳しくは↓の記事で書いています。

つまり、その投資方針を知らないのに信託することが極めて危険であると申し上げておきます。

多くの原油ETFの投資方針は「原油先物へ投資し、原油価格に連動したインデックスの構築」です。

つまり原油が上がれば儲かって下がれば損するってこと?

短期的にはそうですね。

じゃあ原油先物取引と一緒じゃないんですか?

残念ながら違います。先ほど先物取引のところで「決済」という話をしました。

取引所が定めたどこかのタイミングで「原油先物=原油ETFの投資先」が期日を迎えます。

そうすると原油ETFの投資先が決済され、無くなります。

なので原油ETFを運用しているファンドは期限の近い先物を売って、期限の遠い先物を新しく買います。

※「期近の先物を売却し、期先に乗り換える」と表現されます。

この時に大事なのが「期月別の価格推移」です。

先物価格が今の期よりも次の期で上昇している(=コンタンゴ)場合「安く売って高く買いなおす」という状態になり、そのタイミングで無条件で損します。

え、信(用してお金を)託してるのに。。。

そうしないと信託先がなくなってしまうので仕方ないのです。

原油は保管コストがかかるため、期先の価格が上昇しやすい(=コンタンゴになりやすい)傾向にあります。

稀にバックワーデーションという「期先の価格が期近よりも安い状態」となります。

この局面では原油ETFの運用が「期近の高い先物を売って期先の安い先物を買う」になるので利益が出ます。

コンタンゴの方が起きやすいんですよね?

そうです、バックワーデーションなら長期的に利益になるのですが、稀です。そして2020年5月現在の状況はコンタンゴです。

つまり原油ETFは「短期的には原油価格に連動するが長期的には下落していくETF」です。

参考までに原油価格と原油ETFの比較チャートを載せておきます。ETFにレバレッジはかかっていません。(上がETF下が原油先物)

一見連動しているようにも見えますが原油価格の騰落率とETFの騰落率が微妙にずれて(乖離)います。

この乖離が小さいうちは問題ないのですが2020年春のような1か月先物と2か月先物の価格差が数ドル以上開くような異常事態では乖離が大きくなります。

その結果原油価格との連動性が損なわれる可能性があります。

実際に運用元の野村証券などは注意喚起を行っています。

5(追記).コンタンゴで損するという意味

この記事の公開後、いくつかの質問を頂きました。

その中でも「コンタンゴで損する」という意味が分かりにくかったようです。

運用会社の視点に立って説明します。

今、原油1か月先物が18ドルと仮定します。ここで先物を100枚買います。これを運用します。

そしてそのままにしていると期限が近くなり、期先の先物に乗り換える必要が出て来ます。

この時、次の期の原油先物が25ドルだとします(2020年4月の2か月先物はこのくらい)。

すると18ドル100枚買ったお金で原油が25ドルでは72枚になります。

その結果、ETFとして運用している原油先物の枚数は100枚→72枚になります。

つまり原油先物の値動きに対してETFの値動きが72%になります。

そして期限をまたいだ後には先物を25ドルで72枚持っていることになりますので原油価格が25ドルを超えなくては利益になりません。

18ドル→25ドルは先物を乗り換えただけですので、先物の運用損益にはならずETFの価格にも影響を与えません。

つまり2020年4月時点の原油ETFは原油価格が18ドルの時に買って先物期限を跨いで25ドルの時に売却しても利益0になるということです。

コンタンゴの差は通常もっと小さく、だいたい0.5ドル等なのです。

なんでこんなにコンタンゴの差が大きいんですか?

この異常なコンタンゴの差はコロナによる経済封鎖が解除されると需要が跳ね上がることを見こされて期先の価格が大きくなっていると考えています。

つまり、先物価格は「経済封鎖はまだ解除されなさそうだな」と思われると25ドルから本来の市場価格まで落下します。

先物価格が18ドルの時に買って乗り換えて25ドルになったとします。この25ドルはおそらく経済封鎖解除を見込んでいます。

しかし、経済封鎖解除されなくて期限が近づき18ドルになったとします。ここで決済すると見かけ上は原油18ドルの時にETFを買い、18ドルの時に売却しています。

しかし先物を乗り換えているので、25ドル→18ドルの4割損×72%=30%位の損になります。

6.まとめ

  • 先物とは「いつ何をいくらでどのくらい買うかor売るか」という権利のこと。
  • 先物ETFは先物の仕組みを理解してから触りましょう。
  • 原油ETFは長期的に見るとコンタンゴが多いため減価していく。
  • コンタンゴの差が1ドル以上あるのは極めて異常な事態なので危険

ということでした。

初心者にとって非常に難解でわかりにくい記事だったとは思います。ゴメンナサイ。

正直、結論として「原油ETFやめとけ」でも良いです。それより原油安で恩恵を受ける企業を探す方が楽しいかもしれません。

この状況下で原油ETFを買うなら「信託先の先物の期限前に売却する」「いつ経済封鎖が解除されるかを当てる」必要があります。

黙ってコンタンゴを食らうとそれだけで数十%損しかねない異常事態ですから止めておくのが良いかと思います。

金先物やVIX先物ETFについても同様で、先物の理解やコンタンゴ/バックワーデーションの理解が大切だと思います。

ということで、お読みいただきありがとうございました。

7.2020年5月追記

原油ETFのうちWTI原油先物に連動するETFは信託対象をWTI原油先物に設定しています。

余りにも原油価格が急変動したために運用元が頻回なロールオーバーを行いました。

その結果8月限の先物9割、12月限の先物1割といった状況になっております。これでは原油価格への連動性は乏しいと思います。

ご注意ください。

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